事業承継税制②
Q 法人版事業承継税制とは、どのような制度でしょうか。
A 非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予制度を言います。
⑴ 事業承継税制とは
事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
⑵ 一般措置と特例措置の比較
一般措置とは、平成21年度税制改正において創設され、その後改正され続けて現在に至る従来の事業承継税制を言います。一方、特例措置とは平成30年度税制改正において創設された10年間の相続・贈与に限定された事業承継税制を言います。
【措置の内容】
一般措置 | 特例措置 | |
事前の計画策定 | 不要 | 5年以内の特例承継計画の提出(2018年4月1日から2023年3月31日まで) |
適用期限 | なし | 10年以内の贈与・相続等(2018年1月1日から2027年12月31日まで) |
対象株数 | 総株式数の最大3分の2まで | 全株式 |
納税猶予割合 | 贈与100%、相続80% | 100% |
承継パターン | 複数の株主から1人の後継者 | 複数の株主から最大3人の後継者 |
雇用確保要件 | 承継後5年間、平均 8割の雇用維持が必要 | 弾力化 |
経営環境変化に対応した免除 | なし | あり |
相続時精算課税の適用 | 60歳以上の者から20歳以上の推定相続人・孫への贈与 | 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 |
【納税猶予を受けるための主な要件】
区分 | 一般措置 | 特例措置 |
対象会社の要件の一部 | ・中小企業者であること(医療法人、社会福祉法人、士業法人、外国会社は法における中小企業者には該当しない) ・上場会社、風俗営業会社でないこと ・資産保有型会社、資産有用型会社でないこと *一定の事業実態がある場合には、資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないものとみなされる | (同左) |
先代経営者(贈与者・被 相続人)の要件の一部 | ・会社の代表者であったこと ・贈与者(贈与の時前において会社の代表者であった者に限る)が贈与の直前(贈与者が贈与の直前において会社の代表者でない場合には、贈与者が会社の代表者であった期間内のいずれかの時及び贈与の直前)において、先代経営者(贈与者)と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ同族内(後継者を除く)で筆頭株主であったこと ・被相続人(相続の開始前において会社の代表者であった者に限る)が相続の開始の直前(被相続人が相続の開始の直前において会社の代表者でない場合には、被相続人が会社の代表者であった期間内のいずれかの時及び相続の開始の直前)において先代経営者(被相続人)と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ同族内(後継者を除く)で筆頭株主であったこと ・特例措置及び一般措置の認定を受けた贈与を行っていないこと ・〔贈与のみ〕贈与時に代表者を退任していること | (同左) |
(同上) | ・特例承継計画に記載された先代経営者であること | - |
先代経営者以外の株主(贈与 者・被相続人)の要件の一部 | 【前提条件:先代経営者から後継者への贈与又は相続が行われていること】 ・代表権を有していないこと ・特例措置及び一般措置の認定を受けた贈与を行っていないこと | (同左) |
後継者(受贈者・相 続人)の要件の一部 | ・特例承継計画に記載された特例後継者であること ・贈与時又は相続開始時において、後継者と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ次の①又は②を満たしていること ① 一人で承継する場合、同族内で筆頭株主となること ② 複数人で承継する場合、各後継者がその同族関係者の中で最も多くの議決権を有していること(既に又は同時に特例措置の適用を受けている後継者を除く) | ・贈与時又は相続開始時において、後継者と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ同族内で筆頭株主となること |
(同上) | ・〔贈与のみ〕贈与時に20歳以上、かつ贈与の直前において3年以上連続して役員であり、贈与の時に代表者であること ・〔相続のみ〕相続の開始の直前において役員であり、相続の開始の翌日から5カ月を経過する日以後に代表者であること | (同左) |
Point
全ての要件を満たす必要がありますが、これらの制度を有効に活用し、円滑に事業承継を行いましょう。