贈与の落とし穴(連年贈与)に気を付けよう

(1) 継続して贈与する場合の課税上の取扱い

最近は、書籍やインターネット等で簡単に情報を得ることが可能な環境となりました。それ故、その情報により将来の相続に対して何等かの対策が必要であると認識・理解する機会を得られますが、場合によっては説明不十分な情報により独自に解釈して自己中心的な対策を講じてしまうという危険な側面もございます。

原則として年間110万円までの贈与については贈与税がかからないため、暦年課税による贈与は相続対策・相続税対策においてよく用いられる方法です。したがって、継続して贈与をおこなうこと(いわゆる連年贈与)をお考えになれる方が多いのですが、その場合には注意が必要です。

贈与でも当初より15年間にわたり毎年100万円ずつ贈与を受けることが約束されている場合には、その時(約束をした時)に15年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利(定期金に関する権利)の贈与を受けたものとして取り扱われ、贈与税申告・納税が必要となります。

(2) 連年贈与と認定されないための留意事項

各年に独立した贈与を行う場合には問題はありませんが、毎年同じ金額を同じ月日にそして同じ相手に贈与を行う場合には、課税当局からあらぬ疑いをかけられる可能性も否定はできません。よって暦年贈与を複数年にわたりおこなう場合には、次の事項を理解しておく必要があります。

  • 各贈与は原則として独立した個々の取引である
  • 当初より複数年にわたり一定額を分割して贈与する契約をした時は、定期金に関する権利の贈与を受けたものして贈与税が生じる

なお実務では、この様に一見同じ取引に思えても実際は異なる課税上の取扱いを受けるものが多く存在します。専門家やアドバイザーに説明を受ければその違いは明らかとなるとしても、一般の方が当初からその相違を判断するのは難しいこともあります。

何事においても自ら情報を収集し検討をすることは非常に大切です。しかし法律や税務、諸手続きに関し疑問に感じる箇所があれば独自に判断をせず、専門家やアドバイザーに確認しましょう。