(1) 債務控除

相続税を算出する場合において一定の要件を満たす相続人等が被相続人の債務を承継して負担したり葬式費用を負担したりするときは、その負担分を遺産総額等から差し引くことができます。

① 債務

控除対象となる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。具体的には、借入金・未払医療費・未払固定資産税・賃貸物件の敷金等があげられます。

なお、墓所・霊廟・祭具等や公益事業用財産の取得・維持・管理等のために生じた債務は控除できません。

② 葬式費用

葬式費用に該当するもの

  • 葬式や葬送の際またそれ以前に火葬・埋葬・納骨等に要した費用(仮葬式と本葬式を行ったときはその双方の費用)
  • 遺体や遺骨の回送に要した費用
  • 葬式に際しお寺に対して読経料等のお礼に要した費用
  • 葬式の前後に生じた出費でお通夜など通常葬式に伴うもの
  • 死体や遺骨の運搬等にかかった費用

葬式費用に該当しないもの

  • 香典返戻費用
  • 墓石・墓地の買入費や墓地の借入料
  • 初七日等の法会に要する費用

(2) 非課税財産

相続財産のうちその性質上、社会政策的な見地・国民感情などから相続税の課税対象とすることが望ましくない次の財産については、相続税の課税対象となっておりません。相続税の課税対象となっていないもの

  1. 皇室経済法の規定により皇嗣が受けた物
  2. 墓地、霊廟、仏具、仏壇等
  3. 公益事業用財産
  4. 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
  5. 相続人が受け取った生命保険金のうち一定金額
  6. 相続人が受け取った退職手当金のうち一定金額
  7. 相続財産を申告期限までに国等に寄附した場合におけるその寄附財産
  8. 特定公益信託に支出した相続財産である金銭

(3) 医療費の課税上の取扱い

 医療費については一定の要件を満たせば医療費控除(所得税)および債務控除(相続税)の適用を受けることができます。具体的には次のとおりです(被相続人に支払能力があることを前提としております)。

被相続人の一定の医療費で被相続人が支払ったもの

医療費控除(被相続人の準確定申告)の対象となります。

被相続人の一定の医療費で相続開始後に同一生計親族である相続人が支払ったもの

債務控除(相続税)の対象および医療費控除(相続人の確定申告)の対象となります。